海外の剣道団体の受け入れに向けて
静岡県では現在、国内外の武道愛好家に対し、県内での武道家との交流や合宿の実施を促す誘致活動を行っています。
そんな中、2024年7月4日から7日にかけてイタリアのミラノで第19回剣道世界選手権大会(WKC)が開催されました。
海外の人々がどのように武道に親しんでいるのかを実際に見て、これを県内の活動にどう結びつけるかのヒントを得るため、県スポーツ交流海外連絡員(ロンドン在住)の酒井元実氏が大会の場を訪れました。
<以下酒井氏のレポート>
今回の剣道世界選手権を視察して感じたことは、世界の人々は剣道について、より自由な発想やアイデアで取り組んでいるということでした。
日本で行われている武道は得てして、伝統的な価値観に由来していると考えられましょう。武道場は剣道を含む武道全般において、単なる技術練習の場を超えた神聖な場所として位置づけられており、ここでは「心・技・体」の一体化が重要視されます。
一方で外国では剣道をどう捉えているでしょうか。多くの剣士たちは日本の伝統について知識として意識しながらも、試合での勝利や技術的なパフォーマンスが主要な目標で、フィジカルなトレーニングや試合での成果が強調されることがより多い傾向がみられます。
【外国人剣士にどう対応する?】
海外にはよほど特別な事情でもない限り、専用の武道場で剣道ができる環境はありません。今回の世界選手権でもそうであるように、海外では一般的に多目的に使える体育館やスポーツセンターなどで行われることが多く見られます。
ですから、ある自治体で「剣道チームの合宿」を引き受けると考えた時、「武道場を使って欲しいが、我が市町にはそんな好適な施設はない」と断念するのはもったいないことです。地域の体育館等でも充分に各国の世界選手権代表クラスの人々でも練習場所として受け入れてくれます。
【合宿団体へのおもてなしは?】
外国人団体を受け入れる時、「言葉や習慣、食事などに関する違い」を心配する声もよく聞きます。
しかし、剣道をはじめとする武道家たちは、必ずと言って良いほど日本のあらゆることに大きな興味を持っています。実際に取り組むとなれば、食事の嗜好や制限などの情報は事前に知っておく、あるいは最小限のコミュニケーションが取れるような外国語に通じたサポートは必要かもしれません。
全体的な取り組みとしては、「外国人相手だから」と特別な対応を考えるよりも、ありのままの地域の生活の様子が感じられるような形で良いかと考えます。
【「伝統的な価値観」を伝えることも大切】
海外の剣道のトレーニングの場において、必ずしも競技性のみを追求するわけではありません。体育館やスポーツセンターでの剣道であっても、日本で培われている礼儀や精神修養を尊重する指導が行われ、道場の精神を取り入れた練習がなされるケースも少なくありません。
ですから、仮に海外の剣道団体を受け入れるような機会があったら、日本でだからこそできる、剣道の心を外国の剣士たちにしっかりと伝えるーーそんな場を設けることこそ、国際交流につながるに違いありません。
次回の剣道世界選手権は2027年に東京で実施されます。県下での国際理解と交流の手段として、「武道ツーリズム」を活かすことができるでしょうか?